最終更新:2026-11-01
📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。
古物営業法には、ほとんどの条文に「古物商又は古物市場主は」という書き出しが出てきます。古物商は「古物を売り買いする人」。では古物市場主とは誰なのか。
このサイトでは、古物市場を使う側の話は古物市場を使った仕入れ戦略や業種別の専門市場ガイドで扱ってきました。この記事は市場を開く側の話です。先に結論を書きます。
🔴 古物商の許可では、古物市場を開けません。古物市場を経営するには、別に「古物市場主」の許可を受けます(古物営業法 第2条第2項第2号・第3条)。
許可を受けずに古物市場を経営すると、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。無許可で古物商の営業をした場合と同じ重さです。
(古物営業法 第31条第1号)
条文の定義——「古物営業」は3つある
この法律において「古物営業」とは、次に掲げる営業をいう。
一 古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業(略)
二 古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場をいう。以下同じ。)を経営する営業
三 古物の売買をしようとする者のあつせんを競りの方法(略)により行う営業(前号に掲げるものを除く。以下「古物競りあつせん業」という。)
(古物営業法 第2条第2項)
そして同条4項が、「古物市場主」とは、次条の規定による許可を受けて第二項第二号に掲げる営業を営む者と定めています。3つを並べると、違いがはっきりします。
| 古物商 | 古物市場主 | 古物競りあっせん業者 | |
|---|---|---|---|
| 何をする営業か | 古物を売り買い・交換する(1号) | 古物商どうしが売り買いする市場を経営する(2号) | ネットオークションなどで、売買のあっせんを競りの方法で行う(3号) |
| 始めるには | 許可(法3条) | 許可(法3条) | 届出(営業開始の日から2週間以内・法10条の2) |
| 許可・届出の窓口 | 主たる営業所の所在地の公安委員会 | 主たる古物市場の所在地の公安委員会 | 営業の本拠の所在地の公安委員会 |
| 帳簿 | 法16条(1万円未満などの免除あり) | 法17条(金額による免除の規定なし) | 記録の努力義務(法21条の4) |
⭕ 古物商と古物市場主は、同じ法3条の許可ですが「許可の種類」が別です。公安委員会が国家公安委員会に報告する事項でも、「許可の種類(古物商又は古物市場主の別)」が独立した項目になっています(古物営業法施行規則31条)。古物競りあっせん業者との違いは古物競りあっせん業者の記事で整理しています。
場所を貸すだけなら、古物市場主ではない
警察庁の解釈運用基準は、古物市場主を「古物市場を複数の古物商にその取引の場として提供し、その取引を円滑に行わせることにより、入場料、手数料等を徴収する形態の営業を行う者」と説明しています。そのうえで、古物商どうしの取引に場所を提供していても、無料で提供している場合や、室料を取っていてもそれが単なる場所の提供の代価にとどまり、取引の遂行に一切関与しない場合は、古物市場主に当たらないとしています(令和8年5月14日 丙生企発第51号 第1の3)。⭕ 線を引くのは「市場の名前」ではなく、取引を回して入場料・手数料を取っているかどうかです。
市場の中は「古物商どうし」だけ
古物市場においては、古物商間でなければ古物を売買し、交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けてはならない。
(古物営業法 第14条第3項)
古物市場は定義からして「古物商間の」市場です。参加する人は全員、古物商の許可を持っている必要があり、一般の人の持ち込みを受けて売り買いすることはできません。違反は6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(法33条1号)。
また、古物市場での古物商どうしの取引は、解釈運用基準で「行商」に含まれるとされています(同通達 第5の3(1)②)。市場に参加する古物商は、許可申請書の行商の欄を「する」にしておく必要があります(古物商許可の基礎)。
⚠ 市場主が自分でも売り買いに加わるなら、古物商の許可も必要です。市場の中で取引できるのは古物商どうしだけなので、古物市場主の許可だけでは、自分が売り手・買い手になることはできません。両方の営業をする事業者は、2つの許可を受けることになります。
なお、古物商が古物市場主の経営する古物市場以外の場所で競り売りをするときは、あらかじめ公安委員会への届出が必要です(法10条1項)。古物市場主の市場で売るぶんには、この届出は要りません。詳しくは競り売りの届出にまとめました。
許可を取るには——古物商と同じところ、違うところ
同じところ
- 許可の基準(欠格事由)は共通です。法4条の各号は「古物商又は古物市場主」のどちらにも同じように当てはまります。
- 手数料は19,000円。「古物営業法第三条の規定に基づく古物営業の許可の申請に対する審査」として、古物商と同額です(地方公共団体の手数料の標準に関する政令)。
- 略歴書・住民票の写し・誓約書・身分証明書(法人なら定款・登記事項証明書と役員全員の分)を出す点も同じです(施行規則1条の3第3項)。
- 管理者を1人選ぶのも同じ。古物市場主は古物市場ごとに管理者1人を選任します(法13条1項)。
違うところ
- 🔴 市場の「規約」と「参集者の名簿」を付ける。古物市場を経営しようとする者は、古物市場ごとの規約(市場の開閉の日時、取引の要領などを書いた書面)を添付し、その規約には古物市場に参集する主たる古物商の住所及び氏名を記載した名簿を付けなければなりません(施行規則1条の3第3項4号・同条4項)。
- 出す先は「主たる古物市場」の所在地の警察署です(法5条1項・施行規則1条の3第2項)。
- 申請書のうち、行商をするかどうかの別と、ホームページ(URL)を使うかどうかの欄は、古物商(法2条2項1号の営業)だけが書く項目です(法5条1項5号・6号)。
- 許可後に規約の内容を変えたら、速やかに、市場の所在地の警察署長を経由して変更後の規約を公安委員会に提出します(施行規則6条)。
審査の期間は、古物商より長めです。滋賀県公安委員会の標準処理期間は古物商40日・古物市場主50日(いずれも行政庁の休日を含まない)で、愛知県警察も古物市場主の許可証は「申請から50日前後」で交付すると案内しています。標準処理期間は各公安委員会が定めるものなので、申請先の都道府県で確認してください(審査で何を見られるか)。
許可を取ったあと——市場主にかかる義務
① 取引の都度、帳簿に記録する(法17条)
古物市場主は、その古物市場において売買され、又は交換される古物につき、取引の都度、前条第一号から第三号までに規定する事項並びに取引の当事者の住所及び氏名を帳簿等に記載をし、又は電磁的方法により記録をしておかなければならない。
(古物営業法 第17条)
記録するのは取引の年月日/古物の品目及び数量/古物の特徴/取引の当事者(売り手と買い手)の住所及び氏名です。帳簿の様式は施行規則で、古物商用(別記様式第15号)とは別に古物市場主用(別記様式第16号)が定められています(施行規則17条1項)。
🔴 古物商の帳簿と違い、金額による免除がありません。古物商の法16条には「1万円未満の取引」などの免除(ただし書)がありますが、法17条にはその規定がありません。市場で動いた古物は、金額にかかわらず取引の都度記録します。古物商側の免除のしくみは古物台帳とプレート・売ったときの帳簿で整理しています。
記録は3年間、古物市場に備え付けるか、直ちに書面に表示できる状態で保存します(法18条1項)。き損・亡失したら、直ちに古物市場の所在地の所轄警察署長に届け出ます(法18条2項)。
② 品触れを受けたら6か月保存し、相当品が出たら届け出る(法19条)
警察から品触れ(盗品などの手配書)を受けたら、到達の日付を書いて6か月保存します(法19条2項)。その期間内に、品触れに相当する古物が取引のため古物市場に出たときは、直ちに警察官に届け出なければなりません(法19条4項)。古物商が「所持していたとき・受け取ったとき」に届け出るのに対し、市場主は「市場に出たとき」が基準です。品触れ全体の流れは品触れが届いたらで解説しています。
③ そのほか、古物商と共通の義務
- 標識の掲示——古物市場ごとに、公衆の見やすい場所に、規則で定める様式の標識を掲げます(法12条1項・施行規則11条)。
- 変更の届出——古物市場の名称・所在地を変えるときは事前に、それ以外の申請事項(管理者など)が変わったときは事後に届け出ます(法7条)。
- 名義貸しの禁止(法9条)、立入り・検査(警察職員は営業時間中に古物市場へ立ち入り、古物と帳簿等を検査できる。法22条1項)、指示・営業停止・取消し(法23条・24条)。
- 自動車・自動二輪車・原動機付自転車を扱う市場の管理者には、車体や車台番号の改造の有無を見分ける知識などを得させるよう努める義務があります(法13条3項・施行規則14条)。
怠るとどうなるか
- 🔴 許可を受けずに古物市場を経営した——3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法31条1号)。名義貸しも同じ重さです(法31条3号)。
- 🔴 古物商以外の者との取引を市場でさせた・帳簿を備え付けなかった・品触れ相当品の届出をしなかった——6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(法33条1号)。帳簿に記録しなかった・虚偽を記録した場合も同じです(法33条2号)。
- 標識を掲げなかった、変更の届出をしなかった——10万円以下の罰金(法35条1号・2号)。
- 拘禁刑と罰金は併科されることがあり(法36条)、法人の従業者が違反すれば法人にも罰金が科され得ます(法38条)。行政処分の段階は立入りから営業停止までで整理しています。
⚠ 古物市場主の許可申請は件数が少なく、窓口での案内や必要書類の細部(規約の書き方、名簿の範囲など)は都道府県によって異なることがあります。申請前に、主たる古物市場の所在地を管轄する警察署(生活安全課・防犯係)で必ずご確認ください。本記事は法令にもとづく一般的な情報提供であり、個別の許可を保証するものではありません。
よくある質問
古物商の許可があれば、古物市場を開けますか?
開けません。古物営業法2条2項は、古物の売買をする営業(1号)と古物市場を経営する営業(2号)を別の営業として定めており、3条で、それぞれ公安委員会の許可が必要です。古物市場を経営するには古物市場主の許可を受けます。許可を受けずに古物市場を経営すると、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(同法31条1号)。
古物市場には誰でも参加できますか?
できません。古物市場では、古物商どうしでなければ古物を売買・交換し、又は売却・交換の委託を受けることができません(古物営業法14条3項)。参加者は古物商の許可を持っている必要があり、違反は6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(同法33条1号)。
古物市場主の許可申請に、古物商の申請にない書類はありますか?
あります。古物市場ごとの規約(市場の開閉の日時、取引の要領などを書いた書面)と、その規約に付ける「古物市場に参集する主たる古物商の住所及び氏名を記載した名簿」です(古物営業法施行規則1条の3第3項4号・4項)。略歴書・住民票の写し・誓約書・身分証明書・法人の定款と登記事項証明書などは古物商の申請と共通です。手数料は19,000円です。
古物市場主の帳簿は、1万円未満の取引なら書かなくてよいですか?
いいえ。古物市場主の帳簿(古物営業法17条)には、古物商の帳簿(16条)のような金額による免除の規定がありません。市場で売買・交換される古物について、取引の都度、取引の年月日・品目と数量・特徴と、取引の当事者の住所・氏名を記録し、3年間保存します(同法18条1項)。
ネットオークションの運営会社も古物市場主の許可が要りますか?
通常は要りません。インターネットで古物の売買のあっせんを競りの方法で行う営業は「古物競りあっせん業」として、古物市場の経営とは別に定められており(古物営業法2条2項3号)、許可ではなく営業開始の日から2週間以内の届出です(同法10条の2)。
あわせて読みたい
参照した一次情報
- e-Gov法令検索「古物営業法」(昭和24年法律第108号)(第2条 定義/第3条 許可/第4条 許可の基準/第5条 許可の手続/第12条 標識/第13条 管理者/第14条 営業の制限/第17条・第18条 帳簿等/第19条 品触れ/第31条〜第38条 罰則)
- e-Gov法令検索「古物営業法施行規則」(平成7年国家公安委員会規則第10号)(第1条の3 許可の申請/第6条 変更後の規約の提出/第11条 標識の様式/第14条 管理者に得させる知識等/第17条 帳簿等/第31条 報告事項)
- e-Gov法令検索「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」(本則の表 二十八の項:古物営業の許可の申請に対する審査 19,000円)
- 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」令和8年5月14日付け警察庁丙生企発第51号(PDF)(第1の3 古物市場・古物市場主の意義/第5の3 行商の意義)
- 警視庁「古物市場主許可申請」(必要書類:古物市場規約・参集者名簿ほか/手数料)
- 滋賀県警察「審査基準・標準処理期間(古物営業法)」(古物商の許可 40日・古物市場主の許可 50日、行政庁の休日を含まない)
- 愛知県警察「古物市場主許可申請」(提出先・必要書類・許可証の交付は申請から50日前後)